嘱託の順序〜名変登記の省略(その1)〜
Aが所有する甲土地に
B銀行(登記記録上の住所:10番地)を抵当権者とする抵当権が設定されている
①2024年6月15日
B銀行は本店を20番地へ移転した
②2024年6月20日
Aは甲土地をくまのみ市へ売却した
B銀行は、抵当権放棄及び登記承諾をした
同日 登記嘱託
(イ)時系列に並べると

(ロ)登記官の視点(登記義務者の定義と名変登記)
登記義務者の定義を確認してみましょう。
不動産登記法2
登記義務者 権利に関する登記をすることにより、登記上、直接に不利益を受ける登記名義人をいい、間接に不利益を受ける登記名義人を除く。
B銀行は、甲土地の抵当権登記名義人であり、抹消登記により不利益を受けるので登記義務者に該当します。
名変登記は必要?
B銀行の登記記録上の住所は10番地であるので、まずは20番地への名変登記をしなければ、登記官に「別法人のB銀行ですよね?」と言われてしまいます。しかし、本事例の場合は、名変登記を省略できます。
(ハ)順序の再考(名変登記の省略)
昭和31年9月20日民甲2202号局長通達
(a)所有権以外の権利の抹消登記の申請で、
(b)登記義務者に名変原因が生じている場合であれば、
(c)添付書類として変更(更正)を証する書面を添付すれば、
便宜、名変登記の申請を省略して抹消登記をすることができます。
3つの要件の検討
抵当権抹消 → 要件(a)みたす
登記義務者であるB銀行に名変原因が生じている → 要件(b)みたす
変更証明書を添付した(or会社法人等番号を記載した) → 要件(c)みたす
名変登記を省略して、所有権移転及び抵当権抹消を嘱託できます。
※名変登記を省略することが「できる」のであり、省略せずに名変登記を嘱託しても構いません。
嘱託の順序〜名変登記の省略(その2)〜
次の記事を参照してください。
同一性を証する書面[1]
これまで5回にわたりお届けしてきた「嘱託の順序」に関する記事ですが、今回で最終回です。このシリーズが少しでも皆様のお役に立てたなら幸いです。
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